監視大国 中国の技術と懸念
監視大国と言われる中国。なぜ監視大国と言われているのでしょうか。先日、中国政府は、ラップ歌手や入れ墨のある芸能人をテレビやラジオの番組に出演させないという方針を示しました。このようにネット検閲なども含め、中国では監視が日常的に行われているのです。そこで今回は、中国の監視技術と、監視大国であることの懸念についてご紹介致します。
中国の監視カメラ技術
監視と言えば、監視カメラの存在は外せないですよね。日本では監視カメラというより防犯のための防犯カメラとして普及していますが、中国ではどちらかと言うと監視カメラと言えるような使い方がされています。中国では公安や国が最前線で監視カメラの設置を普及させています。国民の考えも、「監視カメラがあっても気にならない」「中国経済が発展している証なので、良い事である」という意見が一般的なので、監視される側の意識も大きく影響しているようです。それから、2016年、世界セキュリティ企業ランキングの第1位、第2位はともに中国の企業です。中国政府とセキュリティ企業は協力関係にあり国内シェアはもちろんのこと、アメリカやドイツなどの企業と提携し、テロ対策強化による需要の拡大による世界シェアを伸ばしています。イタリアミラノの国際空港や、サッカーワールドカップ会場などの大きなプロジェクトでも、中国企業の監視カメラが採用されるなど、中国企業のセキュリティの技術は世界一となっています。
監視カメラの映像で映画を製作
そんな中国ですが、昨年監視カメラの映像で映画が製作され話題になりました。酪農場で働く若い女性と、農場の監視システムの技術者で彼女を監視していた男性の、不運なラブストーリーです。中国で最も有名な芸術家シュー・ビン(Xu Bing)氏らが、中国のインターネットセキュリティ会社などのウェブサイトから監視カメラの映像をダウンロードし、7000時間の映像の中から選り分けて約80分の映画をつくったといいます。監視カメラがあるのは、道路や駅など公共の場所だけではありません。レストランや学校、家庭に設置されることも多く、パスワードの設定と管理をしっかりしていないと、極めてプライベートな映像が全世界に流出してしまうということも起きています。
懸念されるのはやはりプライバシーの侵害
アメリカメディアによると、中国企業のセキュリティ製品はアメリカ都市だけでなく、陸軍基地でも使われており、海外の米国大使館でも一時的に使われていたそうです。中国政府が支配下に置く国有企業の傘下にあることも念頭に、アメリカ国土安全保障省はセキュリティ上の欠陥を指摘したと言います。しかし中国企業側はその報道に反論。具体的には、独立した企業として商業倫理を順守しているほか、ネットワークセキュリティ対策も重視しており、過去も将来も自社製品の中に情報漏洩の出入り口を設けることはないとしています。習近平最高指導部がネット監視を強める中で、一部の海外メディアは監視対象が海外にも拡大する懸念を指摘しています。また、中国では今、交差点のいたるところに設置された監視カメラを使い、信号を無視した歩行者に大型画面で注意を促すシステムが広がっています。裏では最新の顔認証技術を連動させているとのことで、その個人を特定しているそうです。(日本経済新聞参照)
おわりに
今回は、監視大国と言われる中国についてご紹介致しました。テロ対策や交通整備、犯罪の抑止などに、防犯カメラをはじめとするセキュリティシステムとその技術が活用されるのはとても素晴らしいことだと思います。ところが、そこから得た映像が不正に利用されてしまったり、情報が流出してしまうなど、かえって危険にさらされてしまう危険性も潜んでいるということは理解しなければなりません。技術開発が進むとともに、個人データ保護のための環境整備が不可欠となりますね。