監視カメラで犯罪者のオーラを見破る?VibraImageの画像処理技術とは
世界各地でテロが相次ぐ中、監視カメラへの関心とニーズは国内外問わず高まりを見せています。東京オリンピックを控えた日本においても、万全を期したセキュリティー対策は喫緊の課題です。
そんな中で、にわかに注目を集めているものが、「カメラを通して犯罪者のオーラを見抜く」新技術。今回は、次世代監視カメラの主流になるかもしれない画像処理技術VibraImageについて説明します。
体から発せられる振動で人物の感情が分かる
カメラに映し出された被写体の姿を見ただけで、その人物の感情と動向が予測できる画期的な技術を開発したのは、ロシアのセキュリティー部門における国家研究機関「ELSYS(エルシス)」。VibraImageと呼ばれる技術をもとに、不審者や犯人の行動を事前予測し、犯罪防止につなげる監視カメラのシステムも開発されました。
VibraImage技術が搭載されたカメラは、映し出された人物の微妙な感情の動きを感知します。体や表情に表れる振動の大きさや回数によって、被写体の精神状態を可視化するという仕組みです。
感情パターンは、「攻撃的」「緊張」「ごきげん」「平静」「安息」「疲労」「得意」など、全部で50項目に細分化されます。目がキョロキョロ動いたり、口元が震えたりといった表情の揺れとともに、画像が色分けされてその人物が何を考えているのかを識別します。
通常の状態であれば青っぽく色づけされるところが、極度にストレスを感じている状態であれば顔全体が白っぽい色彩に変化するなど、監視側から見れば人物の精神状態が一目瞭然です。このような特徴から、犯罪者のオーラが分かると表現されることもあります。
感情の変化から人物の心理状態を分析する判断基準は、10万人以上・200パターンを超す実験データがもとになっています。そのような緻密なデータを集積したVibraImageのカメラは、ロシアや欧米、インドネシア、韓国など世界各国の施設や要地で使用されており、東京オリンピックを控えた日本においても近々本格的に導入する動きが見られるかもしれません。
異常者検知率92%という成功率
世界中で稼働し、犯罪抑止に効果を上げているVibraImage技術ですが、その運用でもっとも実績を示した例が、2014年に開催されたソチオリンピックです。ピーク時は1日に12万人の来場者が集まったといわれる盛大なスポーツの祭典の影で、VibraImage技術搭載のカメラが不審人物の動向に目を光らせていました。
ゲートの1カ所1カ所に設置された監視カメラの台数は計262台で、1つのゲートにつき1日5人~15人の不審者を数えたといわれています。各会場で白熱した競技が行われる中、並外れた技術を持った監視カメラは虎視眈々と不審人物のあぶり出しに成功していました。
結果的に、カメラが検知した人数に対し、92%の確率で不審人物の特定に成功。ソチオリンピックも終わってみれば大きな犯罪もテロもなく、大きな成功の影で働いたVibraImage技術カメラの活躍も見落としてはならないでしょう。
大規模イベントの警備の切り札に?
不審者を認識する確率92%という数字を見ても、VibraImage技術の精度の高さがうかがえます。多様化する犯罪者の手口や動機に対応できるよう、防犯カメラの分野も顔認証技術の技術開発が進むなど、これからも新しい技術が登場するかもしれません。
ソチオリンピックの成功例を見れば分かるように、VibraImage技術はオリンピックや音楽イベントなど、大勢の人が一堂に会する大規模イベントやビッグプロジェクトなどのセキュリティー対策として力を発揮するでしょう。
VibraImage技術のカメラが成果を出していけば、世界と比べてテロのリスクが低い日本でも、各メーカーの間で導入する例が増えるかもしれません。
おわりに
ロシアで開発された高度な画像処理技術は、世界各国のセキュリティーシステムに導入され、一定の成果を見せています。
2020年の東京オリンピックを成功に導くためにも、高度な組織犯罪やテロに備えたセキュリティー計画の策定が求められるのではないでしょうか。